今夜、君とBloodyKiss
雰囲気に飲まれてか、そっと結の顔が近づいてくる。思わずそっと閉じそうになったら目を無理矢理開き、両手で結の頬を包み淡く動きを止めさせる。
残念。というような表情だけを見せる結に戸惑いながらも、腕を動かすと同時に鳴る鎖の音が引っかかる。
「結、ここどこ?なんで私、手錠で繋がれてるの?なんで……結の目が赤いの?」
疑問が疑問を呼ぶ。次々まくし立てる杏里の質問に、結は一度体を起こすとベッドの淵に腰を掛け直した。
それに習って、杏里も体を起こす。多少目眩はするが起きていられないほど酷くはない。
起き上がって気がついたのだが、結の服装が変わっている。杏里の部屋にいた時はもっと普段着のようでラフな格好だった。だが、今は礼装と言うべききちんとした服装だ。ますます訳が分からない。
「あー、何から説明するかな」
顔を両手で覆いながら上を向く。何か考える時に上を向くのは結の癖だ。何も動かない見た目に反して、結の頭の中は超加速で回っている。答えが出るまで杏里はじっと待つしかない。
結が考え終わるのに、さほど時間はかからなかった。顔から手を離し、そのまま胸の前でパンっと音を立てて合わせる。
「よし、整理ついた。」
一呼吸おいた結が、そのまま杏里に向き直るとあの赤い目が消え、いつも通りの慣れ親しんだ結がそこにいた。
「結……」
懐かしさに胸がいっぱいになる。