今夜、君とBloodyKiss

そんな杏里に、結はにこっと笑うと杏里の手を取り立ち上がる。


「多分、自分の目で見るのが一番だと思うんだ。」


軽く誘うように、立つことを勧められベッドから足を下ろす。結に会って落ち着いたのか、目眩もしない。

足が床に着くと、いままで気にしていなかった自分の服に目がいく。白いシンプルなワンピースだ。


「えっ、えっ」


戸惑いが交錯するが、結は待ってはくれなかった。
行くよ。とそのまま手を引いて部屋を出て行く。その行動に杏里は着いて行くしかなかった。


見覚えのない景色が次々と駆け抜けて行く。まるで、どこかのお城のようだ。
物語で見かけるような庭園が左手側に広がっており、真っ赤なバラが大輪の花を広げながら、悠然と咲いていた。ふわりとバラの香りが漂っていた。
そして見上げれば大きな丸い月がコンコンと景色を青白く照らしている。

不意にゾッと背筋が震えるが、結に手を引かれたままその場を走り去る。


そして、何も話さないまま不意に結が立ち止まったかと思うと、大きな扉の前へとやってきた。


「何……」


見上げる扉は確実に一人で開けるものではない。
重厚な扉。そして、細やかな細工が施してあるその扉になんとも言えない圧力があった。


「ここが、全部杏里ちゃんの疑問を晴らしてくれる場所だよ。」


トンっと軽く結がその重そうな扉を弾くと、驚くほど簡単に向こう側への景色が広がった。

同時に、激しい大きい音楽が流れ込んでくる。
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