今夜、君とBloodyKiss
「えっ?えっ???」
あまりの音の大きさに思わず耳を塞ぐ。
それでも、聞こえてくる音楽の中で大勢の声が重なり、一つのメッセージとなる。
「「「お誕生日おめでとうございます」」」
顔を上げると、驚くほどの人で溢れかえる広間。豪華な飾りが目を引く天井や壁。
割れるような拍手の嵐を受け、杏里はその光景を呆然と見つめる。
今までの人生で全く経験した事のない出来事だからだ。頭の処理が追いつかない。
ぱかっと口を開けたまま、唖然と固まっていると、そっと結が杏里の肩を抱く。
「ふふ、驚いた?」
表情はそのまま、視線だけを動かし結に向かって大きく頭を縦に降る。驚きすぎて声も出ない。
拍手喝采の中、徐々にざわつきが広がり、大勢の人の真ん中で道を作るように左右に人がずれ、道ができる。
階段の上。上座に位置する王座にいる人のために。
「結斗。」
どんっと重く響く声に会場が静まりかえり、次々と彼へ頭を下げる。
隣にいた結の表情が引き締まると、そのまま腕を取られて引っ張られて行く。