今夜、君とBloodyKiss
膝をつく人々の間をくぐり抜け、階段を駆け上がる。
その中央に座するのは彼の家の当主。
「来たか、結斗」
一目で分かる威厳が辺りを覆う。
低い声は、身体が震えるほどに小さいのに頭に響く。
老人が一際高い、豪華な椅子に座っている。若い頃はとてもモテただろうと思うほど顔立ちは老いてはいるものの今でも損なわれていない。
ただ、見下ろす視線は冷たかった。
思わず萎縮してしまい、その場に立ちすくむ杏里だったが隣に居た結斗は平然と歩みを続け、引っ張られるように前へと進む。
とっさに繋がれた手を振り払いたくなったが、どうしても振り切る体力が出てこなかった。
「おじいさま」
話し出す結の服の裾を掴みながら、表情を読み取る。会話の端々に視線が自分に寄せられ値踏みされている気分だ。
不愉快。
そう思ってしまったのは当然だと思う。
それは薄々気が付いていた。この場にいる誰もが自分を嬉々として受け入れていないのは空気で分かる。本気で喜んでいるのは結斗くらいなものだ。
招かざる客なら、即刻家に返して欲しい。
悶々と結斗に対する不満を溜め込んでいると、不意に結斗が顔を覗き込んできた。
その中央に座するのは彼の家の当主。
「来たか、結斗」
一目で分かる威厳が辺りを覆う。
低い声は、身体が震えるほどに小さいのに頭に響く。
老人が一際高い、豪華な椅子に座っている。若い頃はとてもモテただろうと思うほど顔立ちは老いてはいるものの今でも損なわれていない。
ただ、見下ろす視線は冷たかった。
思わず萎縮してしまい、その場に立ちすくむ杏里だったが隣に居た結斗は平然と歩みを続け、引っ張られるように前へと進む。
とっさに繋がれた手を振り払いたくなったが、どうしても振り切る体力が出てこなかった。
「おじいさま」
話し出す結の服の裾を掴みながら、表情を読み取る。会話の端々に視線が自分に寄せられ値踏みされている気分だ。
不愉快。
そう思ってしまったのは当然だと思う。
それは薄々気が付いていた。この場にいる誰もが自分を嬉々として受け入れていないのは空気で分かる。本気で喜んでいるのは結斗くらいなものだ。
招かざる客なら、即刻家に返して欲しい。
悶々と結斗に対する不満を溜め込んでいると、不意に結斗が顔を覗き込んできた。