今夜、君とBloodyKiss

花咲く春。
通学路に咲き乱れる桜を眺めながら、悠々と登校する。
周りを見れば、どこか初々しい1年生の姿が目に入る。大学に入りたてだった過去の自分と重ねながら、歩いていく。


「ーーー見つけた」


突然耳元に届いた声に驚いて振り返ると、誰もいない。ただ、何も関係なさそうな人たちが手の届かない距離で、いきなり振り返った自分を見ているだけだった。


「気の…せい?空耳かな?」


今朝の気分の悪い夢がまだ影響してるのかもしれない。それを忘れるかのように軽く頭を振り、再び歩き出そうと前を見ると優しく風が吹き、桜の花びらが舞い上がる。


その影にいる、知らない人。

今まで前を歩いて居たのだろうか。いや、歩いていたなら気づいていた。気がつかないわけがない。
頭からつま先まで隠れるような長いケープを被った人。性別すら区別がつかず、漆黒の髪の間から覗く赤い目がキラリと光る。

その瞳と視線が交差した瞬間、声も体も動かなくなる。唯一働く思考を動かすが、全く訳がわからず意味がない。


「1000年待ったんだ。この時をな。」


ゆっくり近づいてくるその人がブツブツと小さな声で呟いてる。



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