今夜、君とBloodyKiss
契約は守りましょう
いつも通りの時間に目覚ましがなる。
嫌々身体を起こすと、いつもより身体が重い気がした。
「……気のせいかな」
回らない頭を無理に動かす気はさらさらない。
何も変わらない日常をまた繰り返すだけだ。
小さく息を吐き出すと、気合を入れ直しベッドから足を下ろし、登校の準備に入った。
*-*-*
眠気を打ち払いながら大学までの道のりを歩く。学校が近ずくにつれ、同じような年の人達と同じゴールを目指す。
知らない顔ぶれに混ざって歩く中で、突然背後から声が聞こえた。
「おはよう、杏里ちゃん!」
「お、はよう。結」
振り返るといつも通りの結に、少し安心した。やっぱりあれは夢だったみたいだ。
笑顔で挨拶を返すと、不思議そうに顔を近づけてくる結に少し体をずらす。
「ど、どうしたの」
「いや……ううん。なんでもない。」
不思議そうな表情のくせに、何もないだと?そんな訳あるまい。
思わず結の頬を掴むと左右へ引っ張ってみた。
「なんでもないわけないでしょ!」
「いはい!!いはいよ!!!あんひちゃん!!」
いつも通りの泣き虫結だ。
涙目で訴えながら、頬を引っ張る私の手を止めようとするが本気で止めては来ない。
これもいつも通り。
つまらなくなって、結の頬から手を離すとムクれた表情でスタスタと歩き出す。
「杏ちゃん、どうしたの。なんでご機嫌斜めなの」
後から子犬のようについてくる姿までいつも通りで、あれはやはり自分の勘違いなのだろうか。
「もしくは夢かな。」
「夢?」
思わずポツリと呟いてしまったことに気がつき、ハッと顔を上げる。
目の前にいる結はキョトン顏だ。
やっぱり関係ないか。と心の中で安堵した瞬間、キョトン顏だった結の表情が不敵に変わる。
「夢なわけねーだろ。杏」
「!?」
いつもより、低いどすの利いた声。
しかも、呼び捨て、俺発言。
目の前で放たれた言葉の筈なのに、目の前には結しかいない。
でも、結はそんな言葉遣いはしないはず。