今夜、君とBloodyKiss
驚きのあまり惚けた顔をしていると、
スッと鼻を摘まれる。
「そんな無防備だから、あんなことになっちゃうんだぜ」
「あんなこと…?」
思い当たる節もなく、結の顔を見上げると、ニッと意地悪く笑った。そこから言葉を発さないところを見ると、私の質問に答える気はサラサラないらしい。
「………ムカつく。」
「怒らないでー、杏里ちゃん!」
パッと結の表情が元に戻り、背中からガバッと抱きつかれた。
「ちょっと…結!」
はぐらかさないで、と振り払おうとすると簡単に避けられる。
そして、そっと近づく結の口元。
「すぐに分かるよ。」
耳元から聞こえたのはいつもの結の口調なのに、何故か背筋がゾッとした。
「なんて顔してるの」
苦笑しながら、結の手が杏里の眉間をつつく。
「かわいい杏里ちゃんの顔に、シワがよっちゃうよ」
「……うるさい!」
顔を振って、手を払うとそのまま分からないモヤモヤを抱えながら、学校へと向かう。
待ってー、と背後から聞こえる声を無視して、歩く速度を早めた。