今夜、君とBloodyKiss
気づかれると、きっとそのままサークルへと連行されるだろう。
だが、今日はそんな気分じゃない。

そもそも、活動日なんで不定期だし。

顔を背けながら、早足にその場を離れる。ただ、結のいた場所が帰り道に一番近い階段の近くだったため、少し遠回りになる。

早く帰りたい気持ちを募らせながら、急ぎ目に階段を降りる。

何か嫌な予感はしていた。

「あっ!」

残り数段を残して、足を踏み外すという定番をしてしまうほどに。

手をバタつかせるが、何にもならない。
そのまま重力に身を任せて、落下する。

「杏里ちゃん!」

聞き慣れた声が聞こえる。
同時に激しい衝撃。

「だ、大丈夫…?」

上から聞こえてきた声に、杏里はたっぷり時間をかけて、顔を上げた。
その顔は笑っている。

「なんで、笑ってるの?」

「なんで!?そりゃ、こっちのセリフなんだけど!漫画なら、階段を踏み外した女の子をしっかり受け止めるでしょ!なんで、私はバッチリ床に叩きつけられてるの!?てか、なんで結がここにいるの!!」

半分以上八つ当たりだ。
階段からバッチリ落ちた杏里は、行き場のない怒りをそのまま、何故か避けたはずの結にぶつけていた。
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