今夜、君とBloodyKiss
過ぎて行く日常
「杏里ちゃん、杏里ちゃん!」
ぐらぐらと体を揺すられ、ふわふわと覚醒すれば、ゆっくりと結の顔が視界に入ってきた。
「おはよ、杏里ちゃん」
「う……え??」
ゆっくりと辺りを見渡せば、席に座っていた人たちがちらほらと席を立っている。
おかしい、記憶によればまだ授業中だったはずなのに。
「あれ、授業……」
まだ現実に追いついてない杏里に苦笑しながら結斗が答える。
「終わったよ。杏里ちゃんが2/3寝てる間に。」
「うーそー。」
まだ若干残る眠気に耐えながら、ゆっくりと行動を起こす。
とりあえず机の上の物を全て片付けると、そのまま鞄に放り込んだ。
今日の講義はここまでだ。
帰ろうと席を立った時、勢い良く後ろから誰かに抱きつかれた。
「あーんりちゃーーーんー!」
「うぐぅ…!」
思わずよろけそうになる体を机に手をついて耐える。隣から結の手が伸びていたので、結も支えてくれたようだ。
そしてわなわなと震えながら、振り返らずに声を低める。
「せーつーなぁ!!」
「やん!なんでわかったの!?」
ぴょんっと杏里から離れると、その重さから解放されるように肩を回しながら説明する。
「そんなの声でわかるっちゅーの。」