今夜、君とBloodyKiss
「ふふっ!さすが私の杏里ちゃんね!」
花が咲きそうな可憐な微笑みで男女を虜にするのは、鈴原雪菜。
昨年のミスキャンパスに選ばれた我が大学の女王様で噂では、女優でもあるらしい。ただ、本人は全力で否定してくるが。
「私のって」
呆れたように呟いても、すぐに、距離をつめて首元に雪菜の腕が絡まる。
「だって、だーいすきなんだもん」
言葉を体現するかのように、ぎゅーっと距離が近くなり、抱きしめられる。
初めて会った日から何故か杏里は雪菜のお気に入りとなっていて、これはもう周知の事実だった。
「…やっぱ2人できてるんじゃない?」
その様子を見ていた結斗がボソリと呟くと杏里はため息、雪菜は嬉しそうに自慢する。
「なになにー?結斗くんは羨ましいのかなー??」
「よく、そのやり取り飽きないよね。」
もう慣れてしまった、いつも通りのやりとりに突っ込む元気すら起きてこない。
軽ーく流し、雪菜の腕から逃げ出しながら中途半端だった帰りの用意を手早く済ませる。
そして、いつもの様に言い合ってる2人を放置して、とっとと教室を後にする。
私には、行かなきゃいけない場所がある。