駄目男、最低。
康介の口調はいつの間にかあたしにも染み込んで、依存してゆく。もうどちらの口癖なのか分からないくらい。
「おいで」
叱られた犬の様な彼に、彼のよく使う言い方で呼び掛けた。
康介はパアッと表情を明るくしてあたしにもぞもぞと近寄って上目遣いにあたしの表情を探る。
そんな顔したって許してあげない。
そう、皆勘違いしてるんだ。
許す訳なんてない。ただ、考えない様にしてるだけ。
「美和…まだ怒ってる?」
甘えた口調で見つめる康介はこんな時でさえこいつのまま。
「当たり前。」
冷たい口調に怯む事なく強い目線はあたしを捕まえる。
「…もうしないから」
もう信用はないけどいつもその言葉に期待してしまう。
「同棲しよっか?」
康介は今思いついた様に声を上げた。