空春〜ソラハル〜
何も考えられなくなった。
視界一面高瀬君になって。
あまりの近さに驚いて、
咄嗟に後ろに逃げようとしたけど、
私の後頭部はしっかり
高瀬君の左手で抑えられていて。
そのまま高瀬君の右手が
私の腰に回ったかと思うと
グッと引き寄せられ…
みんな踊ったりしながら
盛り上がってる。
大部屋の隅っこで
唇を重ねている私たちに
気づく人はいなかった。
一瞬だったのかもしれない。
それでも私にはとてもとても
長く感じられた。
初めて知るフワフワした感覚。
目の前にある高瀬君の
整った顔。
抱き合うように密着した体。
ドキドキと脈打つ心臓が、
私のものなのか
高瀬君のものなのかは
わからなかった。