空春〜ソラハル〜
②
-----翌日。
「いってきまーす」
ガチャ
「あ」
いつものように
家を出ると、
隣の部屋から
いつもとは違う人が出てきた。
愛想がないわけでもないけど、
あまり社交的でもないあたしは、
どうしたものか戸惑ってしまう。
「おはよ!」
「あ、おはよ…」
あたしの戸惑いとは不釣り合いに
なつっこい笑顔で迷いなく
挨拶をし、こちらに
駆け寄ってくる高瀬君に、
少し面食らってしまった。
こんな爽やかな挨拶を
されたのは初めてかも…。
「やー!
ちょうど良かった!
学校までの行き方
いまいちわかんなくてさ」
「あ、じゃあ一緒にいく?」
「お願いします!」
高瀬くんは大げさに
敬礼をしてみせたあと、
へへっと笑った。
-------------------…
「そういえば、
1人暮らしなんだね?」
電車に揺られながら
高瀬くんに話しかける。
「まあね。
つっても援助は
してもらってるけど」
「なんでこんな時期に
引越してきたの?」
「んー、まあ
家庭の事情、かな」
そう言われるとこれ以上
何も聞いてはいけないような
気持ちになる。