彼の手
彼の手
「や……こないで」
懇願するあたしの声を無視して、その足は確実にあたしとの距離を縮めている。
「それ以上こっちに来るなら叫ぶわよ」
既に 大きな声を出してはいるけど、彼の足を止めさせる方法がもう、 これしか思い浮かばなかった。
予想通りあたしの弱々しい威嚇はなんの効果もなく、彼のクスリと笑う声に流されてしまう。
ふと、上を見上げると終着点はすぐそこ。
チッと舌打ちしたい
『逃亡者は北へ逃げる』
推理小説での定説。
なんでそんな分かりやすい逃げ方するのよ。と冷笑しながら読んだ記憶があるけど、今のあたしならその心理が少しだけ分かる気がする。
考える余裕なんてなかったんだ。
とりあえずここから逃げなくちゃと本能が働いたんだ。
気づけばこの階段を上っていた。
はぁはぁと乱れる呼吸に、酔いも手伝って足は今にも止まりそうになるのを鞭打って動かす。
そして、頭の中は後悔でいっぱい。
懇願するあたしの声を無視して、その足は確実にあたしとの距離を縮めている。
「それ以上こっちに来るなら叫ぶわよ」
既に 大きな声を出してはいるけど、彼の足を止めさせる方法がもう、 これしか思い浮かばなかった。
予想通りあたしの弱々しい威嚇はなんの効果もなく、彼のクスリと笑う声に流されてしまう。
ふと、上を見上げると終着点はすぐそこ。
チッと舌打ちしたい
『逃亡者は北へ逃げる』
推理小説での定説。
なんでそんな分かりやすい逃げ方するのよ。と冷笑しながら読んだ記憶があるけど、今のあたしならその心理が少しだけ分かる気がする。
考える余裕なんてなかったんだ。
とりあえずここから逃げなくちゃと本能が働いたんだ。
気づけばこの階段を上っていた。
はぁはぁと乱れる呼吸に、酔いも手伝って足は今にも止まりそうになるのを鞭打って動かす。
そして、頭の中は後悔でいっぱい。
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