彼の手
あたしは、アワアワと泡でも吹くんじゃないかってくらい慌ててる彼と、その隣であたしを睨む二人に、これ以上ないってくらい眩しい笑顔を向ける。


そして、その視線をゆっくりと優雅に彼女へと移す





「そんなに敵意剥き出しにしないで。あたし、あなたの邪魔はしないわ。

だけどね、もう皆集まってるの。だから、その人達の前で説明しなくちゃいけないのよ。

もちろんあなたにもしっかり説明してもらわなくちゃいけないわ」




彼女が「なんであたしがっ」ってヒステリックな声をあげたのは完全に無視して今度は彼に微笑む。




「そんなに慌てないで。こんな結果になることも覚悟で『おいた』したんでしょ？だから覚悟はあるのよね？

もうすぐ式が始まるわ。その前にちゃんと説明してきて」





クルリと背中を向けて部屋を後にするあたしの背中に引き留める彼の声がしたけど、そのまま足を進めた。



もう振り返らない。

振り返ったら女々しい未練を口に出してしまいそうだから。



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