【永遠の愛を繋ぐ2人の手】(*ラブコスメ参加作品)
そんな同期であり
友人でもある菊田が
度々私に対して
『ゲンカツギの握手』を
求めて来るようになったのは
入社して1年が経つ頃からだった。
そのキッカケは、ある日の昼休み。
社食を出た私と湖奈美は
隣の休憩スペースで
書類を片手に缶コーヒーを飲んでいる
菊田を見かけて声をかけた。
午後から企画部の新人対象の
企画検討会で発表をすると言う彼は
良く見ると
極度に緊張しているせいか
書類を捲る指先が震えていた。
すぐに気づいた湖奈美が
「…菊田、震えてんじゃん!
書類の通りに進めていけば
何もそんなに緊張なんて
しないんじゃないの!?
男なら堂々としなさいよ!」
と、彼女なりの激励をしても
彼は逆に不機嫌そうな顔つきになり
「…西井(湖奈美の旧姓)。
そんな事言うけどよ…。
初めての検討発表なんだぜ?
んな簡単なモンじゃねえんだよ。」
はぁっ…。とため息を吐きながら
再び書類を視線を戻しかけた菊田に
私は一歩前に出ると
「…はい…菊田。
とりあえず落ちつこうよ…。
誰かと握手すると
意外と緊張がほぐれて
発表も上手くいくかもしれないから。」
そう言って
咄嗟に右手を差し出していた。