True Love
そして、私はそれから今日は何かが違うような気がした。


いつもは来ないのに、よくボールが私の方へ来るのだ。


決して誰かが意図して私の方へ送っているわけではないのだが、今日はそういう日なのだ。


そしてある程度ちゃんとパスを送ることができたものだから、最初は「こっち、こっち」と言っていた声もだんだんと「走れ、走れ」と変わっていく。


サッカーに慣れていない私は頭の中が真っ白になりながら、とりあえず、わけもわからないまま走る。


「花音ちゃん、今日調子いいね」


周りの子にそうやって声をかけられたが、自分ではもう何がなんだか。もっと冷静に動けたらな、としか思えない。


だけど、やはりそんなにうまくいくばかりではなかった。


試合もあともう少しといったときに、私はボールを必死にゴールへと蹴っていた。すると…。


「…っきゃ」


やみくもに走っていたせいで、変に足が絡まってしまった。そして私はそのままその場で崩れ落ちた。


むなしく、ボールだけが進んでいった。


「大丈夫っ?」


近くにいた子たちが私の方へ駆け寄ってきてくれた。


「大丈夫、大丈夫!」


そう言って立ち上がろうとすると、足がズキッと痛んだ。


「桐山、立てるか?」


先生も私の方へ来てくれた。


心配させてはいけない、そう思って痛むのを我慢しながら立ち上がる。


「すいません、大丈夫です」
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