True Love

自覚

カウンター当番の週が終わり、少し日が過ぎて怪我もすっかり治り、時期は梅雨入りした。

梅雨の時期は嫌いだ。湿気のせいで髪の毛は広がるし、何より傘をさして歩くのがめんどくさい。

じめじめした空気感のせいか体もだるくなる。

そして今日もだるいなと思いながら、傘をさして家へ帰ろうとする。

1人で歩いて帰っていると、ふと柴崎くんのことが頭に浮かんだ。

あの日以来、特に柴崎くんと関わることはない。だけど、ふとした時に柴崎くんのことを考えてしまう。

「…どうしたんだろ私」

なんて呟く。

頭の中の柴崎くんをかき消そうと、他のことを考えながら歩いている時だった。

空き地になっているところの端に段ボールとそれを覆うように傘が置かれていることに気が付く。

気になって近づくと、段ボールの中には白い子猫がいた。

「え、捨て猫…?」

私はかがみこんで猫を見た。猫はかなりびしょ濡れだった。

「可哀想に…。でも誰かが傘を置いてってくれたの?」

見かけたこの子を置いていくことは私にはできなくて、話しかけながらどうしようかと悩んだ。
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