True Love
ベンチに腰を掛け、猫が入った段ボールもベンチの上に置く柴崎くんを見ながら私はそのまま屋根の外で立っていた。

そんな私に対して、コンビニの袋から牛乳と紙皿を取り出しながら「座れば」と言った。

「う、うん」

傘を閉じて、猫を挟むようにベンチに座る。

柴崎くんはあまり深さがない紙皿に牛乳をこぼさないように注いで猫に差し出す。

その牛乳を猫はゆっくりペロペロと飲んだ。

私たちは無言でそんな猫の姿を眺めた。



「…こんなに可愛いのに、捨てるなんてあんまりだよ」

私がそうぽつりと呟くと柴崎くんは申し訳なさそうな顔をした。

「俺もこうやってるけど、母親が動物アレルギーだから飼ってやることはできないんだよな。中途半端なことしかできねえ」

この子に「ごめんな」と謝る柴崎くんを見て、私は胸が苦しくなった。

少し考えて私は思い切って言ってみた。

「私、この子飼えないか親に相談してみる!」

「え、大丈夫なのか?」

「わかんないけど、お父さんもお母さんも動物嫌いじゃないはずだから」

猫がミルクを飲みあげるのを待ってから私はこの子を抱えて自分の家へ向かった。

去り際に柴崎くんは「よろしく」と言った。
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