True Love
「お父さんがね、ミルクを飼うにあたって私にちゃんとお世話をするようにって言ったの。だけどね、もちろん私もお世話してるんだけど、お父さんってば私以上にミルクのこと可愛がってて。
この前はこの子に大量の高い餌買ってきて、お母さんに『高い餌に味をしめちゃったらどうするの』って注意されてたんだよ」

ミルクにまつわるエピソードを話すと柴崎くんは楽しそうに聞いていた。

「そうか、よかったなミルク。この家では大切にされてるんだ」

2人でミルクを眺めながら他愛もない会話を少し交わしてから、柴崎くんが帰るようになる。

「じゃあ、そろそろ帰るわ。ミルクに会わせてくれてありがとう」

「うん」

私は一瞬迷って勇気を出して思ったことを言ってみる。

「よかったら、またミルクに会いに来てね」

こんなことを言ったら迷惑だろうか。怪訝そうな顔されたらどうしよう。そんな風に考えたが、意外にも柴崎くんの反応は違った。

「迷惑じゃないなら、また会いたい」

そう言った彼の顔には怪訝な感じもなく、にこやかな笑顔があった。

彼のその笑顔を見て私も思わず顔をくしゃっとさせて笑顔を見せてしまう。

柴崎くんを見送ろうと、ミルクを腕に抱えて一緒に玄関の外に出る。

自転車に乗り、ミルクを一瞥してから私の顔を見て柴崎くんはもう一度私に昨日のことでお礼を言った。

「特に何かいい結果が得られたわけでもないし、私が勝手に出しゃばっただけだから…」
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