True Love
「俺、女子苦手だけど…苦手なりに藤城とも向き合おうとしたけど、やっぱり女子ってよくわかんなくてさ」

「うん、なんか違うよね、女子と男子って」

「でも桐山はなんか違うな。桐山は平気だ」

突然の言葉に一瞬ドキリとする。

「あの日、ミルクを見つけて足を止めてくれたのが桐山でよかったよ。こいつも幸せだと思う」

「う、うん。責任もってこの子のお世話するから、安心してね」

また優しく笑って「また明日」と言って自転車を走りださせた。

私も柴崎くんの背中に向かって「また明日!」と声をかける。どんどん小さくなっていく彼の背中を見届けてからも、その場に立ち尽くしていた。

『桐山は平気だ』という先ほどの柴崎くんの言葉が頭を反芻する。

特別な意味なんてないんだろうけど、変にその言葉について深く考えてしまう。

すると後ろからお母さんの声がした。

「花音、そんな所で何やってんの?」

それで我に返り、「クラスの子がミルクに会いに来てたの」と答える。

「ふうん、もう帰っちゃったの?お母さん、花音の新しいお友達に会いたかったわ」

きっと『クラスの子』を女の子だと思ってるんだろうな。会いたがってるお母さんには申し訳ないけど、柴崎くんに会わせるわけにはいかない。私にはそんな勇気持ち合わせていないし。

お母さんと一緒に家に入り、空になったコップを乗せたお盆を取って流しに持っていく。
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