薔薇色のキス

キスの余韻でボーッとする私をフワッと彼の爽やかな香りが包んだ。

「真優」

甘い囁きに全身が溶けてしまいそうになる。

「俺の彼女になって」

「何番目のですか?」

意地悪を言ってしまうのは、酔ってるせいにしてもいいよね。

「一番に決まってるだろ、何番目もないし」

「そうなんですか?」

「酔ってる振りして苛めないでくれ」

やっぱり見抜かれちゃうんだ。

だったら私の気持ちも見抜いているのよね?

「職場でどんな顔をしたらいいのかって
 思うと……」

「それは俺の台詞だ」

「え?」

「いつも気になったいたその唇を知ってしま
 って、仕事に集中できるかどうか……」

「手塚さん」

「修介(しゅうすけ)だ」

「……修介さん」

「俺の彼女になるよな?」

こくっと頷いて『はい』と言おうとしたら、
チュッと唇が重なった。

なんだか展開が早くてまだ信じられない。

「薔薇色の頬が見られるのはいつかなぁ」

「えっ……あっ!」

もー里美ちゃんの馬鹿ー!
彼の前で素っぴんになれないじゃない!

「もちろん、身体中が薔薇色に染まるのを
 見せてもらった後だけどね」

「薔薇色になんてなりませんから!」

「そうか?」

立ち上がった彼が差し出した左手に右手を重ねる。

「さっき、何て言おうとしたんですか?」

「ん?」

「私が白雪姫だったら、って言いかけた…」

「ああ」

繋いだ手をぐいっと引かれて、彼の腕に抱き締められる。

「君が本当に白雪姫なら」

愛しげに頬を撫でてから、親指が下唇をゆっくりなぞる。

「こうすれば俺を好きだってわかるだろうと
 言おうとしたんだ」


再び落ちてきた修介さんの唇を受けながら、

確かにこんなに甘いキスをされたら

虜になってしまうと思っていた。




私が白雪姫だとしたら、

眼鏡王子でも腹黒王子でも

甘いキスをくれるあなたが王子様。




Fin


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