センセイの白衣
その日、願掛けのしてある鉛筆や、消しゴムをもらって。

先生たちが、センター試験激励会を開いてくれて。

今までお世話になった先生が、たくさん応援してくれた。


そして、帰りに職員室の前を通った時。



「晴子。」



呼ばれて、振り返ると。

職員室の扉が少し開いていて、その向こうに、川上先生がいた。



「先生。」


「おいで。」



先生のそばにいくと。

少し開いたドアの間から、先生がすっと手を差し出してきた。


それって―――


少し戸惑いながらも、その手を握る。

遅れて、先生もぎゅっと握り返してくれた。


その冷たい手の感触、私はずっと、忘れられない。


そのまま先生は、手を離して去って行った。

頑張れ、でもなく。

落ち着いて、でもなく。


黙って握手してくれた先生。


そんな先生は、私の気持ちを誰よりも分かっていたんだね。



いい点をとる必要はなくて。

だけど、大失敗するわけにもいかない。

そんな私の、微妙で切ない気持ちを。


だから先生は、敢えて頑張れ、なんて言わなかった。



ありがとう、先生―――
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