センセイの白衣
部屋の中で何を話していたか、今となってはちゃんと思い出せないけど。

どうでもいいことばっかり、ずっと話していたね。

あの時間、あの優しい時間は、一体何だったのだろう。


閉ざされたドアの中で、先生とふたり。

過去も未来も忘れて、そこにはただ、今だけがあった。

時間に限りもなくて。


先生と一緒にいられて幸せ、というよりは。

ドキドキ、というよりは。


空っぽになった私の心を、先生が満たしてくれるみたいな。

そんな日々だったんだ。



「受験票、届いたんですよー。」


「どれ?見せてみろ!」


「やだ、絶対見せない!」


「見せろって!」


「誰が証明写真なんか見せるかー!」


「見せろ!」



そんなこと言って、言い争って。

結局、無理矢理奪われたりして。



「別に、そんなに悪くないじゃん。」


「えー、私こんなですか!」


「こんなもんじゃないの?」


「ひどいーーー!!!」


「ははは、嘘だ。嘘!」



そんなことを言って、笑い合ったりして。


先生は、私を笑わせるのが誰よりうまい。

家では、あれからずっと、必要最小限しか会話をしていなくて。

寂しかった私を、慰めてくれるみたいに。

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