センセイの白衣
その頃の私は、もうひとつの楽しみがあった。


1年生の時は華道部で、毎週水曜日に花を活けていたけれど。

そのゆったりしたペースが、なんだか私には合わなかったみたいで。

一年続けて、辞めてしまった。


そんな私だから、親にはもう部活には入るなと言われていたけれど―――



「失礼します。……倉木先生。」


「どうしたの?」


「あの、……文芸部、入りたいんです、」


「わーっ!決定!決定!」


「あ、でも、あの、親が……」


「なになに?」


「親がいいって言ってくれなくて、」


「いいよそんなの!秘密入部!私が代わりにサインしておいてあげるから!」


「え、」


「ほーら、OK!」



倉木先生は、明るくて可愛らしい女の先生。

一年の頃から古典を教わっていた。


私が入りたかったのは、文芸部だ。

小学生の頃から物語を書くのが好きで、毎日書いてたくらいだから。

華道をやめて、やっぱり文芸部で小説が書きたい!

そう思っていたんだ。


倉木先生の圧倒的権力のおかげで、私は親のサインなしで文芸部に入部することとなった。



「ね、はるちゃん、短歌って興味ない?」


「え、短歌、ですか?」


「短歌の大会があるの。そのメンバーを、募集中なの。今、3人集まってて、あと一人メンバーが必要でね!はるちゃん、どうかな?」


「え、でも、短歌なんて詠んだことないです。」


「いいのいいの!みんなで勉強するんだから。ね!やるでしょ?」



押しに弱い私は、こくりとうなずいた。

先生は、嬉しそうに笑いながら、歓迎してくれたね。

私が短歌と出会ったのは、川上先生を好きになったのと同じくらいの時期だったんだ。

あの頃は、毎日がきらきらと輝いていた―――
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