センセイの白衣
春休み明けすぐに、課題確認試験というものがあった。

これは、成績にはあまり含まれないけれど、今までの取り組みを確認するためのテストだ。

そんなテストがあったこと、すっかり忘れていた。



「お前ら遺伝やってないの?出来てる人いないんだけど。」



呆れ顔の先生。

それもそのはず。

一年の履修計画では、遺伝まで終わっているはずだったのに。

横山先生は遺伝に触れることなく授業を終えた。

全然間に合ってなかったみたいだ。


そして、課題確認試験を作ったのは川上先生。

遺伝の問題もしっかり出ていた。

だから、できなくて当然なんだけど。



「返す。相沢ー、」



先生が一人ずつ名前を呼んで、テストを返していく。



「横内。」



呼ばれて、遠慮がちに手を伸ばす。

机まで小走りで走って、そうっと開いてみる。



「げ、」


「晴子~、やばいよ!私、56点だ!!」



亜希子が言う。



「いや、私それどころじゃないよ。」


「え?晴子の方が悪いの?」


「じゃーん。」



公開した点数は、44点―――



「晴子、やば。」


「ね。びっくり。」



そりゃそうだ。

今まで、生物の勉強なんてちゃんとしたことないし。

それ以上に、遺伝はノータッチだし。


だけど、みんなそんなに出来がよくないみたい。

私はなんだか、川上先生が可哀想になってしまった。

前任の先生から丸投げされるって、大変なんじゃないだろうか。



「遺伝をやっていないそうなので、一からやっていかなきゃなりません。まったくもう。」



先生も、怒り気味。

その日から、先生の授業が本格的に始まったんだ。
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