センセイの白衣
母の部屋の、洋服ダンスの下に、小さな棚がある。

そこに、古いアルバムがあるのを、私は知っていた。


ばれるのが怖くて、今まで触れたことのなかたアルバム。

だけど、やっぱり、どうしても知りたかった。

お父さんのこと、知る権利があるって思った。


そっと開くと、そこには私の知らない母と、父の姿があった。

どんどんページをめくると、最後の方には結婚式の写真。

幸せそうな二人の姿に、私の心は痛む。


どうしてだろう。

どうして、この人は今、ここにいないんだろう。

なぜ、お父さんは私を愛してはくれなかったの?



そんなこと、言っても仕方がないから。

今まで口にしたこともなかった。

だけど、実際の父親の姿を写真の中で目の当たりにすると、はらはらとこぼれる涙を、止めることはできなかった。



そこに書いてあった張り紙で、お父さんの名前を知った。

こんなふうに知ることになるなんて、悲しいと思った。

私は私の人生を生きているけれど、きっと、この状況は人から見たら、大分悲しいんだろうなって、思った。



そして、その名前を検索してみたんだ。

同姓同名の人はたくさんいるみたいで、諦めそうになった。

だけど、ひとつひとつ確かめていって。


そして見つけた。


お父さんは今も、同じ県で高校の先生をしている、という事実を。
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