センセイの白衣

理想と現実と

高校は、ずっと憧れていたところだった。

私のクラスは3年間固定で、毎年すごい合格実績があって。

みんな、怖いくらい優秀だった。


私は、ついていくのがやっとで。

毎日、なんだか息をするのが苦しかった。

自分で希望したくせに。

ずっと、憧れていたくせに。


いざ入ってみたら、その苦しさに弱音を吐きそうになって。

でも、聞いてくれる人なんていなかった。


その制服を着ているだけで、誰も私に弱音を吐かせてはくれなかったんだ。

ただ、尊敬されて、羨ましがられて。

ほんとは、苦しんでいるなんて言えなかった。



そんな私はね、先生とすれ違う一瞬、ちゃんと息が吸えた気がしたんだよ。

どこか、遠い昔に、確かに会ったことがあるような。

そんなあなたと会釈をし合う、ほんの一瞬。



ほっとした、というか。

ここにいていいんだ、と思った。




その頃の先生は、私なんかよりずっと。

大きな悲しみを抱えていたんだね。

自分ではどうすることもできない運命の波に呑まれて。

息ができないのは、先生の方だったんだね。
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