センセイの白衣
それなのに。


学園祭の振替休日が過ぎたある日のこと。



「あれ、ゆうちゃんいない!」


「あ、ほんとだ。」



いつもの水槽に、カエルがいなかった。

掃除された綺麗な水槽が、そこに置いてあるだけで。



「あ、それな……、」



後ろから、気まずそうな声が聞こえて、私たちは振り返る。

そこには、困ったような顔をした川上先生がいた。



「連休中に、死んじゃったんだ。直射日光が当たって、水温が上がったんだろ。」


「え!」


「俺がこんなとこに置いといたから。お前たちに見てほしかったんだけどな。」



先生が、そう言って私はなんだか切ない気持ちになる。

先生の名前をつけたカエルが死んじゃったなんて。

なんだか、切なすぎる。



「また、買ってくる。アフリカツメガエルって、ホルモンを注射すれば、一年中発情するんだぞ。だから、実験動物として便利なんだ。」


「ふーん。」



死んじゃったことよりも、そこから新しい知識を授けようとする先生。

本当に、根っからの先生だと思う。

そんな先生に、私は何度救われただろう。


悲しみを、笑顔に変えるのが得意な、先生に―――



「カエルさんが死んだ。みんなで黙祷しよう。」



前に立ってもそんなことを言う先生。

そして、本当にみんなで、しばらく黙祷をして。

終わった後に、みんな笑ってたけど。


そんな先生が、大好きだって、はっきりと思った。
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