センセイの白衣
そして週明けの生物の授業で。



「横内!」



川上先生に呼ばれて、私は首を傾げる。



「スピーチ、まだだろ?」


「はい。」


「俺の白衣貸してやろうか?」


「はい?」



一瞬、先生が何を言っているのか分からなかった。

はい?

はい?

先生が、私に白衣を貸してくださると……そう言ったのですか?


混乱している私の顔を見て、嫌だと受け取ったらしく。

川上先生は、眉を下げる。



「おい、ちゃんと洗濯したやつだから大丈夫だぞ。」



――大丈夫だぞ、って。


何が大丈夫なんだか、さっぱり分からないよ、先生。



「そ、それで私は白衣を着て、何をしたらいいんですか?」


「さあ、何でもしたら?」



にやっと笑う先生は、何だかいつもよりテンションが高いというか。

何だか、悪ノリしてる……?


子どもみたいな先生は、どうやら私に何かさせたいらしい。

私はなんだか、スピーチが楽しみになってきた。
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