センセイの白衣
次の日の朝は、気合い入れすぎなくらいのバースデイ・スピーチをした。

今までの人生で、一番恥ずかしくて、でも割と素敵な誕生日だった。

大好きな免疫について、クラスメイトに暑苦しく語れたし。


だけど、川上先生の白衣を着ることになった経緯について、いろんな人に説明しなくちゃならなくて。

ちょっと大変だった。


川上先生のせいで、川上先生を好きなことがみんなに知れ渡ったというか。

先生、何をやってくれてるの、って思うけど。


でも、やっぱりちょっと幸せ。



放課後は、川上先生に借りていた辞書を返しに行った。

なんだか、先生にはものを借りてばっかりだ。

決して、私が貸してほしいなんて図々しいことを言った覚えはないんだけど。



「お前、これを返しに来ただけか?」


「へ?」


「なんか、無難に終わらせたみたいだけど。」



何で、何で川上先生が、私のスピーチの様子を知ってるわけ??



「言っておきますけど先生、私、最初から笑いをとるつもりなんてなかったんですから。」


「なんだ、残念だなあ。女は愛嬌だぞ。」


「……へ?今先生、何て言いました?」


「何でもない。」



いや、女は愛嬌だぞ、って。

そう言ったよね?



「今度は質問しにおいで。」



優しい声で言われると、私、うぬぼれたくなるよ。

先生にとって、ほんのちょっとでも。

私は特別な生徒なんじゃないかって―――
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