センセイの白衣

風邪

そして、秋の深まったある日。

私の唯一の楽しみ、生物の授業。


しかし、教室に入ってきたのは実習助手の佐藤さんだった。



「みなさん、今日は自習です!勉強するもの取りに行ってもいいので、生物に限らず勉強してください!」



歓声が上がる。

きっと、がっかりしてるのなんて私だけだ。



「川上先生、どうしたんですか?」



佐藤さんに訊いてみる。



「あ、川上先生ね、風邪ひいたみたい。」



佐藤さんはくふ、と笑う。



「今日の朝、弱々しい感じで電話かかってきてね。5組の授業は自習で、って。」


「弱々しい川上先生って、想像つかないんですけど。」


「それがね、熱が出たらしくて、かなりつらそうだった。」



そう言って笑う佐藤さん。

私もつられて笑ってしまう。


佐藤さんは結婚して子供もいるけれど。

いいな、って思う。

可愛いし、いつも先生の助手をしていられるし。

それに、こんなとき、先生の弱々しい声を聞ける。


仕方なく生物の問題集を開いて。

早く復帰してくれないかな、って祈った。
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