センセイの白衣
そしてある8時間目の日。



「お前ら、どうせ模試の生物ひどかったんだろ。」



川上先生が、いつもの口の悪さで私たちを責める。

でも、私は笑っていられた。

だって、今回の記述模試は結構難しかったのに、私生物よかったもん!



「お前何点だった?」


「68点~。」


「げ、最悪。」


「そうでもないじゃないですか~。」



そんなことを言っている亜希子。



「じゃあ、横内は?」


「私、……89点でしたよ!」


「えっ、嘘??信じられない!すごいじゃん!!」



先生の反応の方が信じられないよ。

信じられないくらい嬉しい。



「でもお前、生物より日本史の方ができるんだろ?」



なんだか拗ねたように先生が言う。



「え、そんなことないですよ。」


「数学は?」


「数学は一番できませんね。」



そう言うと、今度は勝ち誇ったかのような笑い声。


先生って、ほんとに分からないな。

他教科の先生と、点数でも張り合っているんだろうか。



「模試、何ができなかったの?」


「え、だから数学と化学と……」


「違う!生物で!!」


「え、単なるケアレスミスですよー。」


「なんだ、そんなのただのバカじゃんか。」



ああ、嬉しいな。

今日は、先生とこんなに話せるなんて。

先生にバカっていわれても嬉しいから、私はやっぱり変態だ。



「そうだ、先生。今度の模試の結果について、担任と二者懇談があるんですよ。やだ~。」


「二者懇談?そんなの、俺が加わって三者懇談にしてやる!」


「なに言ってるんですか~。それじゃ、お父さんみたいじゃないですか。」



言いながら、嬉しいのと切ないのが、混じり合ったような気分になった。

先生みたいなお父さんがいたら、どんなに幸せだろう、って。

そんな感傷的な気分になってしまって。


先生との、こんなどうでもいいやりとりの一つひとつが、私にとってかけがえのないものだった。

先生、先生は誰にでも、そんなこと言うのかもしれないけど―――
< 66 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop