センセイの白衣
嬉しくなった私は、その日の授業で、先生が黒板を消すのを手伝った。

半分を先生が、半分を私が消す。

最後に、黒板の真ん中で黒板消し同士が出会った。



「ありがと。」



先生にそう言われるだけで、舞い上がりそうに嬉しくなる。



「ほら、粉がすごいぞ。はらえ。俺はこれ着てるからいいけど。」



先生は白衣を指差す。

言われた通りぱたぱたとチョークの粉をはらって、二人でむせた。

楽しくて仕方がない。



「お前、さっきの問題できたか?」


「え?計算ですか?」


「そう。」


「……生物に、数学が出てくるのは反則です。」


「数学?あれは算数だろ!」


「数学ですよー!」


「算数だ!今度のテスト、絶対出すからな!」


「勉強するから、絶対出してくださいよ!」



こんな、日々のささやかな会話が、どれほど幸せだっただろう。

いつまでも続けばいいのにって、私はいつもそればっかり考えていた。
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