センセイの白衣
誰よりも、親よりも担任よりも先に相談したのは、川上先生だった。



「先生、私、進路変更します。」


「え、決めたの?」


「はい。私、先生になりたい。川上先生みたいな、生物の先生になりたい。」



土曜課外の、空きの時間。

その90分の時間を、私のために費やしてくれた先生。

私の話にゆっくり耳を傾けてくれて。

いいんじゃないか、って言ってくれた。


そんな先生がいたから、私は足を踏み出してしまったんだ。

今まで、感じたことのなかった気持ち。

私を縛っていたもの、すべてから解き放たれたような。


自分の未来は自分で描くんだって。

初めて心から、そう思えたんだ。


だけど、望みを持つことは、本当の夢を持つことは。

私にとって、こんなにも苦しいことになるとは、その時の私は、知る由もなかったんだ―――
< 83 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop