センセイの白衣
S大のオープンキャンパスに行きたかった私。

でも、最初は日程が模試と被っていて、無理だった。

だけどそのうち、ホームページが更新されて。

オープンキャンパスの日が、変更になった、と書いてあった。



「だから、S大が呼んでる!って思ったんですよ。」


「何をばかなこと言ってるんだ。」



そう言いながら、笑う先生。

でも、ふと笑顔を止めると、言った。



「だけど、反対されてるんだろ?」


「はい。担任にも親にも。四面楚歌です。」



言いながら、少しだけ涙声になってしまった。



「だから、先生に相談してるんじゃないですか。」


「はー?俺に言われても、何もしてやれないぞ。担任じゃないしな。」


「だけどー。」


「お前の担任さん、俺にはどうにもできない。」


「ひどいんですよ、担任。理学部出はおかしい、なんて言って。」



そう言ってしまってから、はっと口に手を当てた。

川上先生も理学部出だって、さっき聞いたばっかりなのに。



「なに?それは聞き捨てならないな。理学部ではおかしいって?何で?」


「それは……、教育の勉強、した方がいいからって。」


「は?理学部でも、教員免許取るときに、教育の勉強するぞ?」



川上先生のこと、遠まわしに侮辱していた担任。

それを、言わなくていいのに、川上先生に言ってしまった私。

そうは言っても、川上先生と担任は同僚なのに。

また川上先生のこと、傷付けてしまったかもしれない―――



「まあとにかく、頑張るしかないんじゃないか?担任さんに対抗して。」


「そうですねー。」


「俺、高校生のとき、スーパースターだったんだぞ!」


「へ?スーパースター、ですか?」


「そう、生物のな。」


「あ、生物の。」



そう言って、にやにや笑う先生が愛おしい。

自分で言うんだから、相当優秀だったんだろう。



「私もなれるかな、スーパースター。」


「それはどうだか。……でも、お前最近、生物いいじゃん。このレベルに達したら、もう下がることはないぞ。」



そんなことを言われて、心の底から嬉しかった。



「頑張ります。頑張って、みんなを説得して、S大行きます。」


「ああ。頑張れ!応援してるから。」



先生、その応援は、他の生徒と同じ?

それとも、少しくらいは、特別―――?
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