Wonderful DaysⅡ
「……変だな」
兄さんも気にしていたのか、時計にちらりと視線を向けて呟いた。
いつもなら、時間ぴったりに姿を現すランスロット。
何かあったのかと立ち上がろうとした時、ノックもしないで入って来たランスロットに驚いた。
「し、失礼致します!」
その様子はかなり慌てていて、沈着冷静なこの男が表情を崩すのを初めて見た。
「……何があった」
ランスロットのただならぬ様子に、兄さんの声が低くなる。
「はい、それが……」
「言え。」
ちらりと兄さんの様子を伺って、言い淀むランスロットに続きを促せば
「……マリア様が、お部屋にいらっしゃいません」
耳を疑うような言葉が聞こえてきた。
「……は?」
驚くのも無理はない。
だって、“あの”マリアだから。