Wonderful DaysⅡ
異変
◇
(side:アルバート)
兄さんから電話が掛かってきたのは、ほんの数分前。
「ふぅ…やっと、終わった……」
───これで、マリアとゆっくり休日を過ごす事が出来るな。
今年最後の仕事を終えて、ホッと息を吐いたのも束の間。
胸ポケットから聞こえてきた、スマホの着信音に眉を寄せた。
スマホを取り出し、画面を見れば……
案の定、我が麗しのお兄様で。
今度は何を言い出すんだろうかと、戦々恐々としながら画面に映る通話ボタンに指で触れる。
「Hello.」
『──…俺だ』
うん、知ってる。
いつもと同じ遣り取りに、思わず苦笑い。
今の時間ならば、兄さんはマリアを連れてイギリスに向かっている筈だから……
プライベートジェットの衛星電話からか?
「あれ? 兄さん、もうイギリスに着いたの?」
軽い冗談のつもりで言ったのに
『そんなわけないだろう』
至って真面目な答えが返ってくる。