Wonderful DaysⅡ
負けるのが、そんなに悔しいのならば……
「もう、魁と賭けするのやめれば?」
ずっと思い続けていたことを口にしたら、俺の言葉にぴくりと片眉が動いてじろりと睨まれた。
賭け事が好きなイギリス人だけど、沈着冷静な兄さんは普段ならば賭けをするなんて事はないわけで。
そんな兄さんが、魁とだけは競うように賭けばかりしているのはなぜだろうか……。
「……この俺が、負けたままでなんて終われるか」
耳に届いたのは、心底悔しそうな兄さんの声。
「………………」
負けたままで終われないっていう兄さんの気持ちは、本っ当によく分かる。
───よく分かるんだけど!!
今までの戦績を考えれば、それっていつまで経っても止められないんじゃないの?
負け続けて悔しがる兄の姿と、勝ち続けて満足気に微笑む魁の姿が簡単に予想できる。
兄さんには悪いけど。やはり、意地を張らずにここら辺で手を引いた方がいい。
そう伝えようとしたのだが……
「なんだ」
「なんでもないです」
とても口にできる空気じゃなくて、喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。