Wonderful DaysⅡ



負けるのが、そんなに悔しいのならば……


「もう、魁と賭けするのやめれば?」


ずっと思い続けていたことを口にしたら、俺の言葉にぴくりと片眉が動いてじろりと睨まれた。

賭け事が好きなイギリス人だけど、沈着冷静な兄さんは普段ならば賭けをするなんて事はないわけで。

そんな兄さんが、魁とだけは競うように賭けばかりしているのはなぜだろうか……。


「……この俺が、負けたままでなんて終われるか」


耳に届いたのは、心底悔しそうな兄さんの声。


「………………」


負けたままで終われないっていう兄さんの気持ちは、本っ当によく分かる。


───よく分かるんだけど!!


今までの戦績を考えれば、それっていつまで経っても止められないんじゃないの?

負け続けて悔しがる兄の姿と、勝ち続けて満足気に微笑む魁の姿が簡単に予想できる。

兄さんには悪いけど。やはり、意地を張らずにここら辺で手を引いた方がいい。

そう伝えようとしたのだが……


「なんだ」


「なんでもないです」


とても口にできる空気じゃなくて、喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。


< 192 / 278 >

この作品をシェア

pagetop