Wonderful DaysⅡ



「……あれを見たら、魁の態度は変わってしまうかな……?」


あの魁に限って、それは有り得ないと分かってはいても、僅かばかりの可能性を少し躊躇いがちに言葉にすれば


「もし、それで態度が変わるようならばそれまでの事。魁との婚約を破棄して、マリアをイギリスに連れ戻せばいいだけの事だ」


一度言葉を区切ると、小さく溜め息を吐いた兄さんは


「───だが……その可能性は、限りなく低いと思うがな」


俺の顔を見て、フッと口角を上げる。


「だよね……」


兄さんの言葉に、あの日のアイツを思い出す。

初対面で俺を真っ直ぐに捕らえていた力強い視線と、あの言葉。


『18になったら、マリアを貰いに行くから』

『必ず、迎えに行く』


僅か12歳で言い放った決意の言葉に、息を呑んだのを昨日の事のように覚えている。

あの魁だから。

マリアを決して傷つけないと言う点では、いつの間にか兄さんだけでなく、俺までアイツを信頼しきっている事に、今更ながらに気がついた。


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