Wonderful DaysⅡ



空調設備の整ったロビーで話していたのならば、手がこんなに冷たくなる事は無いはずで……

咄嗟に、離れていこうとした魁さんの左手を掴んでいた。


「マリア……?」


私の突然の行動に驚いて、目をぱちくりさせる魁さん。


「魁さんは、マーク兄さんとずっと電話で話していたんですよね!?」


きゅっと握り締めたその手は冷え切っていて、どう考えても長時間、外にいたとしか思えなかった。

確かめるように聞いてみれば


「……あぁ、マークさんと電話を切った後に、外でこのホテルの支配人と話をしていたんだ」


「ホテルの支配人?」


見上げたその先の瞳は握られた左手を見て、動揺したように揺れていた。


「マークさんの名前を借りて、ちょっと無理を言って頼みごとをな」


……頼みごと?

それも、マーク兄さんの名前を借りてまでする頼みごとって何?



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