Wonderful DaysⅡ


私の斜め後ろを歩く彼に視線を向けながら質問をすれば、なぜか足を止めて姿勢を正したランスロットさん。

何だろう? と、私もつられて足を止める。

すると彼は、にこりと微笑んだ後


「はい。ミシェル様は休養で、ご姉妹のエヴァンジェリン様の邸宅へ向かいましたので、マリア様がイギリスにご滞在の間は私がお世話をさせて頂く事になりました」


恐ろしい事を言い出した。


「え? お世話?」


「えぇ」


「え? え? 執事さんって……普通、主に付いて行くものなんじゃないんですか?」


「私の雇い主はマーク様です。それに、エヴァンジェリン様の邸宅には、ミシェル様がご結婚前から付いている優秀なバトラーがおりますので」


「そ、そうなんですか……って、そうじゃなくて!
私の世話なんて必要ないです! ランスロットさんの手を煩わせなくても、自分の事くらいは自分でしますから」


「私は、マーク様に命ぜられているのでそれに従うのみです。ご意見があれば、マーク様にお願い致します」


「う……わかりました」


ランスロットさんの意見に納得して、口を噤んだ私。

それにしても、マーク兄さんは何を考えているんだろうか?

私に執事なんて必要ないし。


「さぁ、お風邪をひく前に早く戻りますよ」


「あ、はい……」


終始ランスロットさんのペースで進む遣り取り。

取り敢えず、マーク兄さんに自分の考えを伝える為にも、ランスロットさんに従って家路を急いだ。



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