Wonderful DaysⅡ



その人が視界に映った瞬間、心臓の軋む音が聞こえた気がして思わずコートの上から胸に手を当てる。


───どうして……


ドキンドキンと心臓の音が、耳元で煩く鳴り響く。


───何で、こんな所であの人に会っちゃうの……?


私の視線の先には……

当時、スクールで私を虐めていたシーモア家のお嬢様と呼ばれていた先輩がいた。

前から派手だった先輩は、以前と比べれば大人っぽくなっているけれど一目で彼女だとわかる。

虐められていた当時は何でもなかったのに……

今、彼女の姿を見ただけで指先が震え出して止まらない。


───どうしよう……


此処にいる事を彼女に知られたくないけれど、皆で来ているクリスマス・ミサなのに私のわがままで帰りたいなんて言えない……


「マリア? どうした?」


「…あ……」


顔に出ていたのか、心配そうに私を覗き込んで声を掛けてきた隣のアル兄さん。



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