Wonderful DaysⅡ
◇
「はぁ……」
先輩に気づかれずに外へ出られた安心感からか、無意識に口から零れる白い吐息。
空へと消えていく吐息を見上げれば、空から降り注ぐ粉雪が髪や肩に静かに舞い落ちてくる。
「マリア様、お手洗いに行かれるのでは?」
建物から出たと同時に、斜め後ろから聞こえてきた声。
「ランスロットさん!?」
その声の主に驚いて振り返れば、いつの間にか傍に控えていたランスロットさん。
───え!? 出て来る時は、ジャックさんとアニーさんしかいなかったよね!?
気配を消して行動するその動きは最早、忍者のようで。
全然、気づかなかったんですけど……
「お手洗いではなかったのですか?」
もう一度尋ねてくる、忍者ランスロットさんに
「礼拝が始まる前に、外の空気を吸いたくなってしまって……」
苦笑いで答えれば
「本日は人出も多くなっておりますので、あまり単独行動はなさらない方がよろしいかと思いますが」
ぴしりと釘を刺された。