Wonderful DaysⅡ
◇
「おかえりなさい、マーク。待っていたのよ」
重厚な造りの屋敷に足を踏み入れれば、リビングにある一人掛けのソファーに座ってくつろいでいたお婆さまが、マーク兄さんに声を掛けてくる。
「ただいま戻りました、お婆様」
マーク兄さんが、柔かに答えるから
「ご無沙汰しています、お婆様……」
お婆様の視界に映った私も、無難な挨拶を言葉にしてお辞儀をした。
「…久しぶりね、マリア。よく来たわ、寒かったでしょう?」
久しぶりに会ったお婆様は、私に向かってやさしく微笑む。
これも、いつもの事……
お婆様は、兄さん達の前では私にとても優しく接する。
周りのメイドさん達も余計な事は一切口にせず、にこやかにしているから。
兄さん達の目には、お婆様が私をとても可愛がっているように見えていて……
私が本当の事を告げても、信じてもらえないかもしれない。