Wonderful DaysⅡ
「さぁ、そんなところで立っていないで、こちらにいらっしゃい」
ソファーに促すお婆様。
私の前にいたマーク兄さんは、お婆様と軽くハグを交わすと隣のソファーへと腰を掛けた。
マーク兄さんがハグを交わして、私がしないのは不自然で。
ちらりとお婆様の様子を伺えば、変わらず笑顔を浮かべて私を見ていた。
───怖い……
私の目には、恐ろしく見えるその笑顔。
ハグを交わさなきゃいけないのに、体がそれを拒否する。
「マリア?」
「あ……」
いつまでも動かない私に声を掛けるマーク兄さん。
それに反応するように、重い足をゆっくりと動かした私は、一歩一歩前へ進む。
笑顔のお婆様と、ぎこちなくハグを交わした時だった。
私の耳に押し当てられたお婆様の唇。
私にしか聞こえない小さな声で囁いた言葉に、背筋が凍る。
「…………ら…?」
「……っ……!」
それを聞いた瞬間、顔から血の気が引いていく。