Wonderful DaysⅡ
持っていた鞄を胸に抱きかかえるようにして、屋敷の中央の広い階段を一気に駆け上る。
普段なら周りが気になってこんな事しないけど、今はそんな事気にしていられなかった。
「……はぁっ……」
見慣れた扉を勢いよく開けて、後ろ手に閉じると無意識に止めていた息を吐き出した。
「はぁっ、はぁっ……」
あの場から逃げ出せた事に安心したのか、ガクガクと震えていた足の力がフッと抜けて、そのままズルズルと崩れ落ちていく。
ドクドクとうるさい心臓を落ち着けるように、何度も深呼吸をして抱きかかえていた鞄に力を込めた。
───あの時……
お婆様とハグを交わした時に言われた言葉。
『…おかしいわねぇ? クリスマスは家族と過ごすものなのに、なぜ他人が入り込んでいるのかしら?』
お婆様の中で、やっぱり私は家族に入っていなかった。