Wonderful DaysⅡ
その表情は、いつもと変わらず涼しげで。
今の今まで、すっかり忘れていたが……
イギリスに来る前に、電話で会話をしていた時の魁はインフルエンザで寝込んでいた筈。
この短期間で回復したとは、とても思えなかった。
「まだ、熱が下がっていないだろ」
兄さんの指摘に、僅かに瞳を見開いた魁。
「え……魁さん?」
それに気づいたマリアが、驚いて魁を仰ぎ見る。
心配そうに見つめられて、苦笑いを浮かべると
「いつから気づいていたんですか?」
兄さんに視線を向けた。
「初めから。普段のお前なら、あんなに大人しくしていなかっただろうからな」
「……お見通しでしたか」
兄さんが言っているのは、きっとお婆様とあの女の事だろう。
俺達が駆け付けた時には、マリアは叩かれた後だったが……
普段なら、どうなっていたんだ?
兄さんに似ている事を考えれば、妙な悪寒が背筋を走りぬけた。