童話曇灯-fairytale detective-
笑顔で透に手を振り終わった宇率が、ぱっと方向転換をして教室へ戻る。
「気のせい……か?」
いや、違う……――――
王輝は、府林に背を向けた瞬間の表情に眉間を固くした。
一瞬で笑顔を凍りつかせたように見えた。
『バカな男』なんて、漫画にでも出てきそうなくらいな安っぽい言葉が聞こえた気がした。
それが全部気のせいだったら、どんなに楽か――――
とてつもなく面倒臭いことになりそうな予感がして、王輝はまた溜息を吐いた。
「こんな所でどうした? 誰かに用事なら呼んでやるけど」
教室の前でぼうっと立っていた王輝に、1人の男子生徒が声を掛けた。
「あ、あの……。このクラスに料理部の人がいるって聞いたんですけど……」
「料理部か。宇率のことかな?ちょっと待ってて。今呼ぶから」
「あ、ありがとうございます!」
王輝は、慌てて男子生徒に頭を下げた。
「ただ、宇率には気を付けた方がいい」