童話曇灯-fairytale detective-

安出の態度を見て黙り込んだ後、姫羅はそっと肩を揺らした。


そんな姫羅を、安出が眉を下げる。



「そんなお顔はやめて下さい。それに、どうして安出さんが敬語をお使いになるんですの?」


「へ? い、いや、だって……」


「安出さんは3年生で、あたくしは2年生ですのよ? しかも、安出さんは部長さんなのですから。
あたくしに敬語など不自然ですわ、安出先輩」



にっこりと笑顔で微笑む姫羅に、安出がぎこちなく微笑んだ。



「そっか……。うん。何か有名人だからさ……うん。そっか。
じゃあ……4日間よろしくね。亜須賀さん」


「はい!」



にっこりと微笑むと、姫羅は練習に参加しようと足を進めた。



「そういえば、さ、素敵な水着……だね。
ピンクのラインの入った水着って、この部では誰も着てないから」


「あ、ありがとうございます。すみません、何だか派手で……」



姫羅の着ている水着は紺色で、控え目ではあるが縦に一本、ピンクのグラデーションが綺麗なラインが入っている。



「そんなことないよ! じゃあ……、始めようか」



そう言ってプールに入った安出を、姫羅は穏やかな表情で見つめた。
< 60 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop